書籍「すべては森から」

この本を読み終えて、住まいが私たちにもたらす真の価値について、深く考えさせられました。

書籍「すべては森から 住まいとウェルビーイングの新・基準」は、その問いに対する、非常に示唆に富んだ答えを提示しています。

本書が示しているのは、人間のウェルビーイング（心身の健康と幸福）と、自然や森が与える恩恵が、決して切り離せないという事実です。

技術や効率ばかりが優先されがちな現代の暮らしの中で、本書は心地よさの根源である森からの恩恵について、改めて考えるきっかけを与えてくれます。

私たちの会社のある茨城県は、海や山など自然に恵まれています。

そのような場所に行った時に感じる心身の気持ちよさは、以前から感じていました。

しかし、本書で、人間の体には、昼夜のサイクルや自然のゆらぎ（1/fゆらぎ）と同調する機能が備わっているという記述を読み、それが科学的に証明されていることに深く納得しました。

この気持ちよさは、自然界のリズムに体が同調しているからなのだと認識したのです。

また、私たちが建築する建物は、内部に塗り壁や無垢材を使用していますが、長年そのような空間に身を置くと、ビニールクロスなどの部屋と比べて空気感が違うことを肌で実感していました。

この肌感覚が、本書が解き明かした自然界のリズムという普遍の真理に結びついたことは、私にとって大きな喜びでした。

そして、その真理を究極的に体現する空間として、本の中で紹介されていたスリランカのヘリタンスカンダマラには、いつか訪れたいと強く感じます。

室内よりも外の方が過ごしやすいという気候の中で、いかに自然のリズムを建築に取り込むか。

その答えを、直接この肌で感じてみたいと思うのです。

今まで言語化できなかった自然に触れる気持ちよさが、この本によって理解できたことが、心から嬉しく思いました。

私たちはあくまでもこの地球の自然の一部である、ということを考えれば、自然界のリズムを意識して生活し、そのような材料を使うことが、心と体にとって最も豊かで幸せなことなのだと、改めて思いました。