2025.11.21

美濃和紙あかりアート展と陰翳礼讃

岐阜県美濃市で開催されている、美濃和紙あかりアート展。

このアート展は1994年に初開催されて以来、多くの人々に愛されてきた活動です。

会場で見た作品の魅力には、思わず立ち止まり、その場を離れがたいほどの魅力を感じました。

私がこの活動を知ったきっかけは、元々、陰翳礼讃という日本人特有の美意識に興味があったからです。

華やかな光を追い求める西洋とは異なり、日本は古来、「陰影の中」にこそ美を見出す文化を育んできました。

陰翳礼讃とは、谷崎潤一郎さんの随筆で知られる、日本の伝統的な美意識です。

暗がりの中でこそ物の質感が際立ち、わずかな光がもたらす揺らぎや陰影が、私たち日本人の感性に深く響きます。

豪華な明るさではなく、慎ましく、奥ゆかしい光を愛する感性と言えるのではないでしょうか。

この美意識について深める中で、照明デザイナーの石井幹子さんによる著作「新・陰翳礼讃」という一冊の本に出会いました。

そして、その本で紹介されていた活動として、この美濃和紙あかりアート展が開催されていることを知り足を運びました。

伝統的な提灯や和紙の技術を用いながら、現代の生活空間における光と影のあり方を問い直す展示。

実際に見た作品の光は、決して強くはありません。

周囲の空間に溶け込むように静かに光り、観る者の心に安らぎを与えてくれます。

その光が作り出す影が、会場の空間を豊かに彩る主役のように感じられたのが印象的でした。

日本人のDNAに深く刻まれた、光に対する研ぎ澄まされた美意識。

それを現代につないでいこうとする、このアート展の静かな活動に、心から感銘を受けました。

私たちも、日常の中にある光と影の機微を大切にし、日本の素晴らしい感性を未来へとつないでいきたいと思います。

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